2012年02月16日

第29章 言 葉

言 葉
 やよ春、明けて、春は来たりて、
時を、人に謳歌する共感を、告げる。
春が、もろ手を挙げて、人に、
「我、来たり」と、大気色を、誇る。
花綻ぶ、これを見よと、春が宣言する。


 朝、その人は、かの才媛に会った。
その人は、この前の才媛の鋭い言葉の
せいか、いささか小さくなって、「おはよう」と、
挨拶を返す。


 心中は、頗る愉快である。一晩のうちの睡眠に、
金本位がなくなることが、ほぼ確実に、その人の
脳に、明らかになったからである。100%、金本位
はなくなると、確信できたのである。今、考えることは、
そのときになって、どういうようになるかということである。
才媛に同道後、一言、「なくなる。金本位」と言って、
同道を終えた。


その人の頭は、世間とは、全然かけ離れたものである。
既にこの時点で、世間を過去にみている。世間より、
早く未来を見ているのである。

世界はパニックの状態であるかのように思われる
であろう状況を呈する。
真のパニックかどうか。また、この金本位が、
何をきっかけに、なくなっていくだろうか。
こんなことを、歩きながら考えている。

世界は、パニックを言うが、パニックは起こらない。
経済の変化にともなう、銀行の取り付け騒ぎという、
過去の歴史も学んだが、ほぼこれも起こらない、
ここまで、考えが進んだ。
取り立てていう、変化は、どんなものがあるか。
考えたが思い当たらない。世界経済というからには、
貿易には何か変化があるだろうか。どんな変化があるか、
これも考えたが、思い当たらない、わからないのである。

そうこうしているうちに、「何を考えているんだ?」と、
声が聞こえてきた。「金本位がなくなった後を考えている」
と答えた。「まだ、いうてるのか」と、いささか、蔑まれて、
相手にされない。

 
その人の卓見である。周りとは同調しない、明治の
教育の影響が現れてきたのである。自分は、50年遅い
教育を受けている。これが、後、少しの間で、世間より
早い結果を呈出してくる。いつかは、わからないが、
早晩に、この結果が出る。50年遅いのが、遅くならず、
世間を、先んじて歩くことになる。これが、なんともいえない、
その人の、愉快である。50年遅いと思ってきたのが、
一挙に解決される。自分ひとりが、ぼつぼつと、皆の
後からついていく。それが、気がつけば、皆より、早く
歩いていた。こんな結果が、確実にやってくる。

これが、金本位制がなくなる、と同時にやってくる、
その人は、そう思った。

それまでの、遅い遅れた50年が、遅くなく
遅れていないのである。こんな結果が、目の前に、
出てくる。


 勝利の声が聞こえているのである。我が言葉の
力強きを悦ぶ、その人である。円が上がるのである。
金本位を、振りほどいて、円が上がる。その日が、
来るのである。倍以上上がると表現したその人である。
その人を相手にしない、蔑む周りの声は、絶賛の声と、
その人には聞こえる。この日が来る。

その人の、若い素直な、喜びである。
政治経済記事をくわしく読まない、その人である。
年も若く、その方面の本も読んでいない。
けれども、自分の考えが実現すると確信を
持ったその人である。

(2012/02/16)
posted by 若軍 at 21:15| Comment(0) | TrackBack(0) | 小説
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