2012年02月08日

第23章 浪 漫

第23章 浪 漫

 浪漫とは、ありえないことと、辞書に
書いている。空想に近いものである。

 大正浪漫とは、何かという。ロマンチックな
時代を思う。あの有名な画家の目の大きな
漫画のような着物姿の女性の絵のことか。
それが、ロマンという周囲である。

 その人は耳を疑ったのである。甘い
ロマンチックかと、周囲に尋ねた。

 その人の思う大正時代とは、大分違う
と思ったのである。その人の浪漫とは
大分違う。道には、戦車が行き交い、
軍用車が走り、軍服姿の兵隊が、
列を成し、空には、軍用機が飛んでいる。
かたや、外国では、革命が起き、世界大戦
という時代である。あの女性は、兵舎へ
いったのでもあろうか。なよなよした女性
ではなく、強い女性である。そう思ったのである。

 その人には、もっと浪漫がある。「璽」という
字をみれば、浪漫が湧いてくる。教育勅語に
出てくる。この教育勅語は、墓に上げる言葉
である。墓の前で読むものであるという。
「璽」に、墓の意味を感じるという。
御名御璽、墓に書かれた名前であると。
それを御名御璽というのである。
これが、その人の浪漫である。「璽」の字の
ロマンであるという。そういって、考えるそぶりを
した。
 
 しばらくして、音楽の浪漫もあるという。あの
さびしげという短調のロシア民謡、あれを歌って
戦争をするのかと、尋ねをかねて、感じたことをいう。
「・・雄雄しき丈夫、出でてゆく
・・・」、ロシアの戦争の指揮官は歌を歌い、
雄雄しきの「雄」の声をきけば、大砲を撃つように
と部下に命令を下している。
どう聞いても、ロシア民謡は
戦争の歌である気がするという。その人は、
「自分の感じ方がおかしいか」と周りに確かめ
がてら、尋ねる。
周りは、唖然と、その尋ねを聞く。

 「帝国主義が何故わるいのか」と、付け加え
たのである。 「大東亜共栄圏は良い考えで
ある」と言い、明治の教育を受けているその人は、
周りとは、見事に合わないのである。

ここは、土地柄、政治色は、共産主義が強い。
そんな考えを持った人はたくさんいる。戦争
反対の声は、常に聞こえる。ここでなくとも
世間はその声一色である。この戦争反対を
共産主義に結び付け、賛意を得ようとする
政治家もある。年が若いがゆえに、血気
にはやった考えに、感情で同調するひと
もある。革命といい、維新といい、声高に
いう。こんな中、その人は声高にいった。
「国防」と、一言いった。見事にこの声に、
賛意を表わす人が、極、少数ではあるが、
現れた。といっても、共産主義も否定は
しないその人である。 
                 (2012/02/07)
 
 周りはずっと先へ進んでいる。その人、
一人が50年程遅れてついて行く。言うことも違い、
ものの見方が違うのも道理である。よく言えば、
周りに同調しないことともなる。今は、明治時代
であると思って、意見を口にするのである。
明治時代であれば、どうするかという、その人の
考えの根拠である。

posted by 若軍 at 17:32| Comment(0) | 小説
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