2012年02月06日

第22章 手

第22章 手

 その人は、よく自分の手を眺める。
しげしげと見ている。
手の皮が分厚かった頃を思い出した。
手に上から、もう一枚の皮を張っていたのである。
その人の家で作った、皮である。
色も形態も人の皮膚と同じものである。

その薄い皮を手に張っていたのである。
ものを掴むと、よく、その感触がわかり、
分厚い皮膚を実感するのである。

今は、その皮膚もとれて、薄い皮膚になっている。

 この薄さも、その人は感じるのである。

滅多にないが、その人は自分を
「合人(ごうじん)」ということがある。
合成の皮膚を有した人、合成人間、
合成人類といった意味である。
自分の皮膚を喜び、誇りに思った人である。
自分の祖先の皮膚をも張っていたのである。

 その皮膚があった、幼少の頃、竹で、
笛を拵えたことを、うっすらと思い出した。
まだ、指が柔らかく、手先に力を入れれば、
爪が傷つくので、指先に金属様の爪を保護
するものをつけ、手を傷つけないように
作っていった。道具は、千枚通しのような
錐と細いはがたなである。十数本程こし
らえたのである。来る日も来る日も、
家へ帰って、笛作りをしたのである。
青竹から作ったのである。精巧な
出来であった。そんな思い出ととも、
手を見るその人は、合人である。


 幼少時のその人の家には、
大きな分厚い本が積み上げられていた。
その人の祖先が描かれた医学書であり、
もろもろの事が書かれている。分厚い
表紙のつくりである。製本も、その人の
御祖先がされたものである。

 手が好きなその人である。
             (2012/02/06)

posted by 若軍 at 09:56| Comment(0) | 小説
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