2012年02月05日

第3章 窓に雨かかり

第3章 窓に雨かかり


 強雨降り、外に出でる能わず。雨があまりにも、激しく振り出し、窓の景
色は見えず、どんよりと、暗い。その人は、漫然と窓を見ていた。突然、
声をあげた。円の話である。この日、1ドルは、350円という日のこと。「
円は上る。倍以上になる。」  こんなことを口走ったのである。周りの友は、何を言うやらと、その人を見守る。そんな中、尚も言う。「必ず上る。
」 世にこんなことなぞ言う人のいない頃である。不景気を口にする学者の、また、経済評論家の、政治家の、円が安いを嘆く言葉があふれる頃
のことである。

 あくる日、「今日も円はさがってますね。」 周りからいわれたのである
。その人の言や、「経済を見るには、短くても半年から2、3年は期間が
いる。」この間に円は上ると言うのである。今から2年後、3年後である。
全く回りは狐につつまれたという状態である。また、その人は言う。社会
科の教師に言ったのである。「円は今の倍以上になります。」「根拠は?
」「・・・・・」根拠はないのである。上るというだけのことである。

 後日、また言い出したのである。「円が上るためにはアメリカが金本位
をやめたらよい。これで円は上る。」 こんなことを簡単に言ったのである
。 この頃は、ドルの金本位の世界経済である。 人は口々に、「アメリ
カが金本位をやめる、そんなことはあり得ないことである。」  世界はそ
うである。アメリカの金本位を信じているのである。 金本位をやめる、
こんなことを言う人も、世界に誰も居ない。 その人だけが声を張り上げ
、「円は上る。アメリカが金本位をやめる。」  性懲りもなく、こんなこと
を言うのである。金本位は世界経済の根幹である。世界の人々の意見
は微動だにしない。

 その人は、頭を疑われたのである。常識がないというのが周りの人々
で、その人の言を論外と言うのである。世界の人々の頭は、金本位以
外の経済は考えられないのである。全くの思考外である。
                            2010.11.09

 アメリカが金本位をやめれば、世界の経済は、たちまち混乱し、ど
うなるかわからない、あり得ないことである。 また、こんな状況を利して
革命を起こすという人まで現れる。こんなことを各国政府が許すわけは
ない。アメリカもこんなことを充分知っている。だから、アメリカが、金本
位をやめることはあり得ない。こんな意見である。アメリカの金兌換停
止は、人々には、全くの思考外のことである。 

 これは、自分が全く考えられないことを提示された時、頭脳が受け入
れを拒否する。考えられないことを言われた、恐怖ともいえばよいもの
である。考えられない状況に対する、いわれもない現実の状況を守ろう
とする反応である。 

 アメリカの金兌換停止は、その人には、考えられる状況である。何の
衒いもなく、人々の考えられない状況を口にするのである。続けて、そ
の人は、言う。「アメリカが金本位をやめれば、何故、世界経済は混乱
するか。たとえ、やめても混乱はない。」

 周りは、思考外のことを提示され、頭が混乱したのであろうか。口角泡
を飛ばさん許り、思いつく限りの否定をするだけである。 その人は、周
りの意見を受け入れることなく、自信を持って、アメリカの金兌換停止と
円の上昇をいったのである。               「その後」へ続く
                                  20101111

posted by 若軍 at 21:09| Comment(0) | 小説
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