2012年01月26日

第14章 「枕の下の夢」

その人は、小さな頃に見た夢を、一瞬、思い出した。
その頃の夢といえば、来る日も来る日も、戦争のゆめである。
自分が戦っている姿である。戦の真っ只中にいる自分である。
目覚めたときは、汗びっしょりである。
自分が一人前になって、戦っている夢である。今の自分からは
想像だにできない、戦争の夢である。
 周りは、反戦という、平和と言う。もちろん、その人も、平和が
よいという。しかし、戦争も肯定する人である。逃げるだけの戦争で
あるかもしれない。他国が攻めてくれば、せざるを得ない。逃げても
戦争である。戦おうが逃げようが戦争は戦争である。

 自分は戦うという、父母祖の地を守るという。しかし、今で
そういえるのであって、いざ、戦争となれば、逃げるかもしれない。
自分の臆病を思えば、正直な解答である。大砲がなり、玉が飛んでくる、
そんな情景を考えれば、恐いという人である。戦うという、その人の考えは
平和な時で言える決心であって、いざ、戦争となれば、そんな決心は
どこかへぶっ飛んで跡形もなく、一目散逃げていく。その人は、自分を
そう考える。

 戦争に限らず、決心とはそんなものである。
責任を取ります。それは、その時点での言葉であって、
明日になれば、状況が変わり、取りますが、取れなくなる、
たくさんある事例である。自分を直視すればする程、そう
考えるほうが合理である。決心とは、変わるものである。
極論すればそうなる、そんなことを、平気で言う。

 しかし、自分は戦うという。敵に向かって、敢然と戦う、
これがその人の心情である。元来、決心とは、変わらぬ
ことをいうのであるが、自分はこの決心は変わらないと
いう。どちらも、本当であるという。

 戦争は知っているという。夢を見て、本を読み、知っている
という。ただ、経験はない、今のその人である。ところが、
その人は、戦争の経験はあるという。生まれる前にしておいた
という。勝つだけの戦さであったという。
                         2012.01.07
{続く}

これは、その人が、昔書いた覚え書きである。
           「戦」
 星を雨という。流れ星の織りと三和のやまとなる。ケという気の読みの絵である。
琴の絵に勇みの山という。大和譜聞き鎌の絵をとるかやの網という。
和銅を編むという。和銅のコミという。錦夏夜から出る。錦(きん)という。
にしきという。和銅の絵、編む音の譜という。文(ふみ)の山という。明かりの
やせを、編むひぃの、手の矢という。矢音進む。射る鏡という。かが山となる。
柿世(かきよ)の山という。あかで取るひた山という。あおの日となる。青錦の
饗宴という。織り成す青い光る光(かげ)という。織女星と彦星となる。これを
七世(ななよ)という。名を残す世の夜(よる)を色彩(いろどる)る蝉声の
たち消えという。せせみの矢のいわれという。矢を背に負い、天駆(あまが)ける
うちの姿という。この世の生前という。生まれる前に、中支へ行き戦ったうちです。

七夕を見て、空を吊る勇者という。中国人も見た幼児の姿、うちという。中支へ着き、
歩き歩き、原を行く私です。遠くに連山を見ゆ。そこへ着いた。山を目指し、
御父上を捜す私という。私の瞼裏(まぶたうら)に今も尚残る。中原(ちゅうげん)となる。
やや晴れ、いか添う雲、雨中の歩みあり、寒々とする。絵の山という。中支という。
柳条溝外、御父上の声感ず。目前に大勢の敵いたり、馬乗り、近づき、敵前に乗馬、
一気に敵中を駆け抜け、御父に会いたり。   矢の世の譜、これなり。
 
 我が世、二度あり、生前と生を受けた後の今である。幼児期に、これを夢
に見ゆ。二度の生なり。我が世ありあり、世々(よよ)という。我が生、
生まれる前に見たり。有りて有り。文の絵の山という。

 戦さ、天よりの戦さ有り、地の上という。地上の戦さ有り。見たりたり。
冬の穂の浜という。海上という。海の上の天、我が姿ありたり。幼児なり。
我が世の海上という。海戦、戦えり。冬なり。寒き夜、砲吹き、轟音鳴り、
波上がり、砲飛び、血上がり、甲板、血流る。見たりたり。我が戦いなり。
海上降り、雨降る砲弾、火光るうす暗き海という。海上の天に昇り、
海戦、艦船有り見たり。ユウ染める如くなり。

 手飛び、足転がる船上なり。我、砲に有り。弾づつ、砲を取る。
弾運ぶ中、弾飛び、我が後ろの兵倒る。砲、前へ渡し、抱き起こし、
見たり、目、見開きて死に給う。戦さなり。我、戦えり。天、昇る得ず、
時有りて、艦船より見たり。はふの矢、背ナ負う。天、昇りたり、
天より矢落し戦えり。フフ有りたり。艦船に降り、天よりの矢、
見据え相戦えり。我が海に我有り。有りてなん。有りみみ、
ゆりゆれ、海おだやかくも、波しげき。船進み、ことごとく敵船追う。

 近づき近づき、友倒れ、尚進み近づき、砲、火吹き、上がり、多々倒る。
血がかり、友を起こすも、弾飛び交い、服、血塗らるる。息絶え、置き、
敵を見据ゆ。有りてなん。有り有り。

 戦さあり見、見はゆれゆられ、体舞うが如き。船近づくや、火吹き、
轟音、耳、裂くが如き、近づき近づき、離るるを得ず。追う追う、
我が戦さなり、艦船、水入り、尚、追い追う、近々に、敵兵の顔見ゆ。
弾放ち、打ち、打ち打つ。戦さなり。たっぴ、ハフの矢、敵、艦船を射抜き、
兵、弾打つを忘る。

 敵、我を見たり、シュウ オアと聞こえたり。ホア シャオ ホア 答えり。
イーユー シャン ホア 我が声有りて轟く。シャア ホウ フーミーフール
 ファーファー。ミーファーターミー ユーシャオ ヒー ホア。
鶴弓(つるゆみ)有りて有り。兵、友といいたりと覚ゆ。中国兵なり。
我が戦い勝てり。姿、天に有りて、地に戻り至り、中国兵、我を称えり。
我が名、中国に多きを残す。シャオ ホア。シャオ ホア イーヨー。
我が名と聞こえ、有り見、敵兵、体、山と成す。倒れ多き、兵たり。
火吹き、砲焼け 弾打つことのみ有り有り。

 ヒカの世の綴り、書き記す。七月のトミの日、海の戦いなり。
名をホーという、我が生前の名なり。有り有り、生の生、
二つの世生きたり。我が世、世々なり。 

 やまう、まう えまい、舞う我なり。勝てり、勝つ、勝てり、
我が生前の戦なり。

 覚え、齡い、五歳児なり。応召とす。志願なり。
四才の初戦、初陣、勝てり。


posted by 若軍 at 20:42| Comment(0) | 小説
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